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  • 執筆者の写真七色錦華

理想を現実に、女性の独立をサポートしていく!

市山卓彦さん(torch clinic院長/日本生殖医学会生殖医療専門医)

東京・恵比寿駅からすぐという立地に不妊治療を専門とする「Torch Clinic(トーチクリニック)」を開業された市山さん。周産期救急医を経て生殖医療専門医となった市山さんは「女性の就労と不妊治療を両立させる」という課題を掲げ、DX化と専門の医療チームでその理想を現実のものとしている。そんな市山さんに不妊治療の現状や今後の目標などを聞いた。


■ひとりの患者との出会いから産婦人科医を目指す

−−不妊治療をメインにしたきっかけは?

「実家は山口県の開業医で、全然産婦人科とは関係がなかったのですが、大学病院での研修時に担当した患者さんが、妊娠後の検査で初期の子宮頸がんが見つかったもののお産が終わった後に手術をして、最終的には命を失うことになってしまいました。その経験をした後に、ワクチンと検診で防げる子宮頸がんを撲滅しなければいけないと思い、産婦人科医になることを決めました。

そして、静岡県にあるドクターヘリが飛んでいるような高度な救急病院で初期研修をはじめ、周産期救急の医療現場に携わるようになります。そこに搬送されて来る方の多くが、いわゆる高齢妊娠といわれる妊婦さんで、不妊治療をされている方でした。その当時は私自身、恥ずかしながら不妊治療に関しての知識はあまり持っておらず、我々救急医がその人たちが妊娠するまでの苦しい時間を知らないという状態がすごく不自然に感じたので、不妊治療をしっかり研究しようと、福岡県にある大きな病院で不妊治療の研鑽を積もうと思ったのが始まりです」


−−クリニックを自分で開業しようと思ったきっかけはなんですか?

「不妊治療を始めた頃は独立する気はなかったんです。当時働いていたのは日本の不妊治療施設の中でもトップクラスの実績を持つ大きなクリニックで、日本で年間45万件行われている体外受精のうち、年間7000から8000件ぐらいをそこの5人の医師で担当していました。実際に、日本に1万4000人ぐらいいる産婦人科医のうち、不妊治療の専門医というのは900人程度しかいないという非常に稀有な存在なんですが、私はそこで修練をすることでその専門の資格まで取らせていただきました。しかも子宮の中にいるマイクロバイオームという細菌の研究もやらせていただき、2017年のアジア太平洋生殖医学会でヤング・インベスティゲーター・アワード(若手の研究者賞)とベストプレゼンターアワードをいただきました。ありがたいことに日本人でその年の学会受賞は私だけで、研究がすごく評価されたこともあり、その病院でもっと研究をやり続けたいなと思っていたからです。

しかし、そこへ私の母校である順天堂大学から不妊治療の責任者をやってほしいという声がかかり、順天堂大学浦安病院の副センター長として戻りました。 そこで、私は福岡で学んだ技術を活かしながら不妊治療の方法や医療のシステムを見直すことで、成績を大きく向上させました。とはいえ、大学病院では土日や夜の外来は当然できませんから、不妊治療の待ち時間は長いままです。これでは私が感じていた女性の就労と不妊治療の両立という課題は解決できない。だったら自分が開業することでそれを解決できるのではないかと思ったというのが開業のいきさつです」


−−世界的に見て、日本の不妊治療はどういう立ち位置なのでしょうか?

「日本の体外受精の件数は2020年までは世界1位でした。この件数が多いのには晩婚化が背景にあります。実は人生において妊娠する排卵のチャンスは、400回くらいしかないんです。その中で年齢とともに卵子の力はどんどん弱くなり、40歳を過ぎてくるとかなり急速に下がってくるというデータが出ています。実は日本の人たちは、大体39歳から41歳ぐらいの方が最も多く体外受精を行っているので、結果的に、件数が多くても妊娠成績はどうしても低くなってしまいます。ただ技術的には、日本は世界トップクラスだと思います。不妊治療には医者の治療方針の決定、卵を取る技術、その後に取った卵と精子を出会わせる技術が必要なんですが、これを担う胚培養士(エンブリオロジスト)たちの技術が、世界の中でもトップクラスにあります」


■不妊治療のために仕事を辞める女性もいる

−−ご自身のクリニックでこだわった条件があればお聞かせください

「日本で不妊治療を受ける方たちの多くがキャリアウーマンです。若い頃にお仕事をされてキャリアを積み、ようやく結婚を考え始めた頃には、妊娠する力が弱まっているというところがあります。じゃあ不妊治療を始めようかなと思っても、今度はキャリアと妊活の両立がすごく難しいんですね。

たとえば体外受精をやるときに、女性は1か月に5回から6回も病院に通わなければいけません。しかも、その待ち時間は平均1時間から3時間です。順天堂大学が出したデータでは、不妊治療をしている方たちの17%が両立できなくて、仕事を辞めているんです。この原因はやはり患者さんの仕事のスケジュールと、病院のスケジュールが合わないというところにあったので、私のこだわりは、まず、そこの患者さんたちの痛みを解決することでした。ですから土日も病院を開けて、平日も3日間は夜8時までやっています。そんな受診体験のいいクリニックにしたいというのがこだわりだと思います。我々医療者は、もっと患者さんに寄り添うことができるのにも関わらず、工夫が足りないところがありました。私はそういうところに寄り添えるクリニックにしたいなと思いました」


−−その理想を現実にしているものは何でしょうか?

「その実現に貢献しているのがDX化と医療チームですね。私の思いに共感してくれた医療スタッフが多く全国から集まってくれました。たとえば不妊治療経験が非常にある看護師さん、不妊治療だけではなく、救急、ICUの経験があるような看護師さん、妊娠出産の専門家である助産師さんであるとかですね。あとは、がんや生殖心理まで見られるような心理カウンセラーさんであるとか、日本全国の有名クリニックの培養室長、副室長といったエンブリオロジスト(胚培養士)のプロたちも、同じような思いで集まってくれたので、非常に医療のクオリティーが高い組織が組成できたと思っています。いまは理想的な環境で、最高の医療パフォーマンスを提供させていただいています」


■DX化で待ち時間を激減、キャリアウーマンの力に

−−DX化ということでは専用アプリも導入されていますが、そのメリットは?

「DXはこれから先、おそらく日本の医療業界でも一気に進んでいくところだと思います。

いま実装しているのはアプリから予約が取れるのはもちろん、事前にアプリで問診に答えられるので、患者さんが病院に来た時にはすでに全部のニーズが分かっているため、検査などに必要な準備はすべて終わっている状態になっています。すごく早くて、スムーズです。そして、うちは院内でお薬も渡すので、薬局に行く時間がない。会計も後日オンライン決済ができるようになっています。そうすることで、クリニックでの待ち時間を極力減らして、仕事と両立できるクリニックにしていきます。アプリも将来的にはもっといろいろなことができるように改良し、できるだけキャリアウーマンたちの力になりたいと思っています」


−−医師として、また病院の経営者として今後の目標は?

「今後の目標はできるだけ、人が何かを知らないことで、選択できない世の中をなくしたいと思っています。たとえば、卵子に限りがあることもそうですし、更年期で苦しんでいる人をホルモン補充療法で救えること、ピルを飲んだら苦しい生理痛がなくなること。そんなことを知らないから選べないというのは、すごくもったいないと思うわけです。日本でも、いま性教育というのがどんどん縮小してきていますが、私はこのクリニックを通して、経営者としてもどんどん発信をしていきながら、多くの人が自分の体に関心を持つ機会を持ってほしいと思っています」

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